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COLUMN
コラム

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僕より先輩なひきこもりびと。
vol.8
DATE:2021.01.22 WRITER:村山 賢

 昨年末からどーっとひきこもりびとからの相談が続いている。「なかなか病気がよくならない。」「仕事したいけど、今更無理って感じもするし。」「どうして働かなきゃいけなんですか。」などなどみんな様々な事情を抱えている。そして、世間で言われている8050の人からの相談もある。当然、僕より先輩だ。ひきこもりびと歴20年、30年の方々に会うたびに思うのは「よく頑張ってるなー。」ということ。変な、嫌な意味ではなくて、その方々の生き方に凄みを感じるのだ。ひきこもりびと生活は辛いに決まっている。毎日がサバイバルだ。そんな過酷な環境を生き抜いてこられた方々に、僕は単純に感服をするのだ。同じサバイバーとして。
 ある方と外出することになった。ひきこもりびと歴30年という先輩だ。その方を助手席に乗せ、ハローワークへ向かった。道中、「世間ではひきこもることって楽してるって印象を持たれてるようですけど大変でしたね。」って口にすると、しばらく考え込んだ先輩からこんな言葉が返ってきた。「そうですね。大変でした(しみじみ)。学校を卒業して、就職した先の上司とうまくいかなくて会社を辞めました。それで、1週間だけ休もうと思ったんです。疲れてたので。でも、そこから30年も動けなくなるなんて思ってなかったんですよね。楽だったのは最初の1週間だけで、あとの29年と11か月と23日間は地獄でした。」フロントガガラスを見つめながら、平静とそう言う先輩。「おー、深い。格好いい。すげぇ。(僕の心の声)」そして、これが本音なんだろうなーって思う瞬間であった。
 少し休もう。 ― 多くのひきこもりびとも最初はこんな感じなんだと思う。辛いこと、大変なこと、疲れることがあった日は僕だってそう思うし、本当に休むことだってある。ズル休みだってする。それが長いか、短いかだけの差なんだなーって。地獄から生還した先輩から僕はまたひとつ学んだ。