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コラム

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ひきこもりの流儀
vol.13
DATE:2021.11.15 WRITER:村山 賢

 これまで多くのひきこもり当事者や元ひきこもりの人と会ってきた。彼らと話しをしていると面白いと言っちゃ失礼だけど、「なるほどー。」って頷かされることが多い。例えば、ひきこもりをしていても仏壇だけは毎日拝んでた(今、自分がいるのはご先祖さまのおかげだって)とか、筋トレは続けていた(いつ戦争になってもいいように…ならないんだけど)とか、思わず笑っちゃうこともある。
 ある日、「今日でひきこもりから脱出しました。」っていう青年が事務所へやって来た。「へー、よく生きてたねー。」なんていつもの挨拶を交わしたあと、じっくり話を聞いた。彼は9年間ひきこもりを頑張ってきたんだけど、どーしてもスマホが欲しくなって、今日、外に出ようと決意をしたんだって。そして、iphoneにしようかアンドロイドにしようか迷っていて、僕の意見が聞きたくなったらしい。外に出る理由は色々だ。一通り僕のスマホに対する考えを述べたあと、彼の9年間のことが聞きたくなった。彼は人の目が気にならないように毎朝4時に起きて10分くらい犬の散歩に行って、その後ゴミ出しをして、新聞を読んで、家族が起きてくる時間には部屋に戻るって生活を続けてきたんだって。「出来ることがそれぐらいだったんで。」って言うけど、それを毎日続けたのはホント偉いと思う。家族が出掛けた後はトイレ掃除と風呂掃除、趣味のぬか床を混ぜる。「お坊さんかっ!」って思わずツッコミを入れちゃったくらいだけど、彼は「ひきこもりをさせてもらってるお返しに…。」って真面目に答えた。ひきこもりをしていても生活リズムは崩したくなかったんだって。
 もう一人。13年間ひきこもりを頑張った人の話。彼は数年間オンラインゲームをして過ごしてたんだけど、何か身になることをしようって決意をして通信講座にはまった。結果、僕のところにくる頃には9つも資格を保有していたって強者。聞いたこともない資格もあったけど、それに向かって勉強したってことは凄いと思う。
 ひきこもり生活は過酷で、しんどい。とてつもなく長い一日を消化するのだって難儀なことだ。そんな状況の中でそれぞれが頑張って生きている。そして、そこには色んな流儀がある。